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三田図書館・情報学会誌論文(論文ID LIS003151)

著者
Watanabe, Shigeo
和文タイトル
Post-War Children’s Literature in Japan.(戦後日本児童文学の動向)
英文タイトル
Post-War Children's Literature in Japan
掲載号・頁
No.3, p.151-158
発行日
1965-07-01
和文抄録

戦後日本の児童図書の出版の傾向を綿密に描写することは容易なことではない。まず,児童をめぐる社会的環境の変貌,教育制度,教育理念の変転,マスコミ及び消費文化の急速な発達,それに伴なう家庭生活の変化等々,児童向け出版物の内容に強い影響を与える問題が数多く存在する。それに加えて,児童向け出版物の内容は,学習雑誌,漫画雑誌,単行本,全集物,学習参考書,テスト本のたぐいなど,種類は様々であり,或いは,図書の形態を明確にとるものだけとりあげても,絵本あり,幼年童話あり,昔話集あり,小説あり,科学的読物あり,はたまた,図鑑,辞典の類など,題材,対象により,その範疇を限定することも非常に困難である。

従って,この小論文に於ては,文学的色彩の濃い児童雑誌,日本の作家による創作児童文学の代表的作品の若干をとりあげて,戦後の日本の児童文学の動向を紹介しようと試みたものである。

この小論文の主な部分を占めるものは,次の如きである。1) 戦後初期の物資欠乏期における児童雑誌の果した役割とその衰退。2) 『ビルマの竪琴』『ノンちゃん雲にのる』『二十四の瞳』などに代表される児童文学界のアウトサイダーによる傑作とそれらの影響。3) 『山びこ学校』『原爆の子ら』に代表される児童の作文にあらわれた教育の効果と,これら作品の社会的影響。4) 学校図書館の発展が,児童図書出版に与えた影響。そして,最後に,戦後の新しい世代の作家が,日本の古典的伝統に加えて,西欧的な創作方法の影響を加味して,新しい作品を生みだしつつあることを,『竜の子太郎』,『北極のムーシカ,ミーシカ』などを例として紹介した。

また,外国の児童文学の名作の数々が飜訳を通じて,日本の児童図書の中で占める比重は,非常に大きなものであり,また,それらの翻訳された作品が,日本の児童図書出版の傾向及び,日本人の作者による創作に与えた影響は,計り知ることのできないほどのものであるが,この問題は,また,別の機会に,周到な調査に基づいて発表したいと願っている。

種別
原著論文