三田図書館・情報学会:Mita Society for Library and Information Science

【2005研究大会】学術情報流通における大学図書館の位置づけと評価:慶應義塾大学を対象とした事例調査

◆氏名 三根慎二
◆所属 慶應義塾大学大学院文学研究科
◆発表題目 
 学術情報流通における大学図書館の位置づけと評価:慶應義塾大学を対象とした事例調査
◆発表要旨
(1)研究目的
 学術情報流通は,これまで基本的に研究者,大学図書館,学協会,出版者から構成されてきた。特に,大学図書館は,学術情報と研究者を結びつける機関として研究者の研究活動やコミュニケーションを支えてきたと経験的に考えられる。1970-80代以降,学術情報の一つの要である学術雑誌の入手を,研究者は個人購読から図書館の機関購読へと変化させていると言われる。その一方,学術情報流通の電子化という流れの中で,あえて図書館が学術情報を提供する必要はないという大学図書館不要論といった議論もあり,これらは大学図書館に対する評価やその存在意義を問う問題である。
 大学図書館を評価する際の目的とそれに対応する指標は多様であるが,本研究は,大学図書館内部に焦点を当てるのではなく,学術情報流通の中の一構成要素として大学図書館をどのように位置づけ,評価することが可能なのかを試みることを目的とする。これは,不要論に見られるように,学術情報流通を構成する他の要素との関係の中での問題である。大学図書館内部だけを見ていては評価することは不可能で,学術情報流通全体の中に位置づけて考える必要があるからだが,こうした視点からの試みが十分に行われているとは言いがたい。近年の大学評価やオープンアクセスといった流れの中で,大学図書館の位置づけあるいは存在意義を改めて問うことの必要性は小さくないと思われる。
 その際の枠組みとして,学術情報流通を生産性という観点から,インプットとアウトプットを一つの指標として用いることで評価を試みる。つまり,学術情報流通に関わるどのような要因が,成果を生み出すことに貢献しているのか,特にその中でも大学図書館のそれを測定することを試みた。 
(2)研究方法
 実際の調査として慶應義塾大学(理工学系)を対象に,予備研究を行った。インプットおよびアウトプットには,以下を主たる調査対象項目とした。
インプット
・科学研究費取得数および総額
・大学院生数(各研究者の研究室所属の院生が判明する場合も含む)
・大学図書館の所蔵蔵書数
・冊子体および電子ジャーナル(判明分)の雑誌タイトル数(物理学分野のコアおよび周辺のジャーナル)など
アウトプット
・論文の生産性および非引用数
 まず,これらの概念的な関係を整理し,仮説的なモデルの構築を行った。次に,上述した各変数を大学が提供している各種統計やWeb of Science等を用いて調査し,それらの間の相関を見ることで,どのインプットがアウトプット(研究者の生産性)に影響を与えているかを見た。
(3)得られた(予想される)成果
 実態調査から得られたデータをもとに,仮説モデルの妥当性や修正すべき点などを明らかにする予定である。

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