【2005研究大会】電子資料を対象にしたFRBRモデルの展開
◆所属 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科
◆発表題目
電子資料を対象にしたFRBRモデルの展開
◆発表要旨
(1)研究目的
IFLAが提案した「Functional Requirements for Bibliographic Records(FRBR)」で示されているモデル(FRBRモデル)のように,目録の世界(対象資料)を概念レベルで捉え,それをモデル(概念モデル)として表現するアプローチは以前から行われている。その際に,モデルの利用目的(実際の作業における要求)を忠実に表現できるようなモデルを作成する ことが必要である。また,対象資料の特徴を反映したモデルを作成することが望まれる。
本発表は電子資料に焦点を当てた概念モデルについて検討する。冊子体資料だけでなく 電子資料やその他の資料を対象としているFRBRモデルや,電子資料に対象を絞って FRBRモデルを参考にして提案されたモデルは,必ずしも電子資料の全ての特徴を反映したものであるとはいえないのが現状であろう。
本発表を通しての最終的な目標は,電子資料のタイプ(パッケージ系・ネットワーク系)を柔軟に表現できることに加え,対象資料が持っている構造(論理構造)とファイルの構造(物理構造)の関係を適切に表現できるような概念モデルを作成することである。モデルの 作成にあたり,FRBRモデルを出発点として検討していきたい。
本発表の目的は,上述した2点の要件について,FRBRモデルでどの程度考慮されているか(表現することが可能であるか)を検討することである。ただし,本発表では実体レベルでの議論を行い,属性および関連に関わる部分の議論は最小限のものとする。
(2)研究方法
最初にFRBRモデルで示されている4つの実体(Work,Expression,Manifestation,Item)に対して,それぞれの実体の設定意義や他の実体との関係を確認する。そして,先ほど挙げた2点の要件について,FRBRモデルで示されている範囲内で検討を行う。
(3)得られた(予想される)結果
2つの要件のうち,前者についてはManifestationの捉え方が問題となろう。この実体は, 記録媒体(キャリア)を伴っていることが前提とされていて,ウェブ上の資料のようなキャリアを伴わないネットワーク系の資料を柔軟に表現しているとはいえないと思われる。そこで,Manifestationではなく,Work,Expression,Format(Expressionがある形式で固定化されている状態),Item(Copy),Carrierという実体で構成される単純なモデルを提案した。
後者に関して,FRBRモデルではExpressionとManifestationのそれぞれの実体における全体部分関連およびExpressionとManifestationの関連部分が該当するといえる。しかし,FRBRモデルではこれらの関連について十分に議論されていない。そのため,本発表ではこの議論の出発点として,その重要性について可能な範囲で例を挙げて述べることにしたい。