【2005研究大会】法情報専門職に求められる要件ならびにその養成-LIPER横断的研究報告-
◆所属 九州女子大学人間科学部
◆発表題目
法情報専門職に求められる要件ならびにその養成-LIPER横断的研究報告-
◆発表要旨
(1)研究目的
司法制度改革に伴い,弁護士人口の大幅増員,弁護士事務所の執務態勢の強化,弁護士の国際交流の推進,外国法事務弁護士等との提携・協働,法曹養成段階における国際化の要請への配慮が求められている。さらには,刑事裁判に国民が参加する裁判員制度や,労働事件について労使の代表が審判員として参加する労働審判制度の導入等が始まろうとしている。増大する弁護士,裁判員への法情報提供はもとより,社会のグローバル化にともなう外国法の情報提供,さらには情報通信技術導入による法情報提供の変化と法律図書館を取り巻く環境は大きく変化してきている。そのような業務の高度化,提供するサービスの拡大に反比例して職員の削減はさらに進もうとしている。そのような状況下で,法律図書館を担う情報専門職に必要な専門的知識や技能に対する認識を把握し,「法情報専門職」に求められる要件を検討する。そして法情報専門職の養成および研修に際してどのような機関が担当するべきか,法情報専門職の質を維持するための方策について明らかにしようとするものである。
(2)研究方法
米国の法律図書館員と同様な有資格者を想定する事のできない日本では,法学部出身者でかつ司書課程の修了者が,法律図書館において求められる知識と技能を持つものであるのではないかと考える事もできる。しかし法律図書館においても,勤務者の中に法学部出身者が占める比率はかなり低いのが現状である。そこで司書資格を有する者が,図書館で業務に従事しながら各種の研修会や講習会に参加することで,法律図書館において求められる知識・技能を獲得して行くのがより効果的であるという仮説のもとに研究を行おうとしている。法律図書館連絡会加盟機関ならびに法科大学院図書館のレファレンス担当者合計158名に対する質問紙調査を行った。この調査で得られた結果をもとに,回答者の中から養成教育の改善点に意見を記入した者を中心とした10名に対して訪問インタビューによる調査を行う。
(3)予想される成果
質問紙調査は158通に対し,87票(55%)の回答を得た。これらの調査から法情報専門職に求められる知識・技能について,①知識・技術(A.資料・メディア,B.サービス,C.その他)の必要度,②知識・技術の習得についての枠組みを得ようとしている。得られた結果について,最終学歴による視点の違い,学んだ主題領域による観点から分析を行う。さらに質問項目以外に必要とされる知識・技術,さらには養成教育の現状,改善点等についての意見も集約する。しかし上記の数値のみでは,日本の法情報専門職に求められる知識・技術,さらにはその養成についての知見を得ることはできない。そこで10図書館の10名に対し,得られた数値データを事前に送付した後,訪問インタビュー調査を実施し,それらのデータに検討を加えながら仮説に対して検証を行う。その中から,法情報専門職に求められる要件はいかなるものか,また効果的な養成方法についても検討を加える。本発表では,両調査をもとに総合的に分析した結果を報告する。