三田図書館・情報学会:Mita Society for Library and Information Science

【2005研究大会】司書資格科目担当教員に対する意識調査

◆氏名 辻慶太,吉田右子,三輪眞木子,竹内比呂也,村主朋英,柴田正美
◆所属 国立情報学研究所,筑波大学,メディア教育開発センター,千葉大学,愛知淑徳大学,帝塚山大学
◆発表題目 
 司書資格科目担当教員に対する意識調査
◆発表要旨
 情報専門職の養成に向けた図書館情報学教育体制の再構築に関する総合的研究(LIPER)の一環として,日本の大学における図書館情報学教育担当者の現状を明らかにする目的で,質問紙調査(郵送・無記名)を行った。調査対象者は,2004年度に大学で司書課程・司書講習を担当した専任・非常勤教員で,調査項目は (1) 担当者のプロフィール・担当科目,(2) 教育目標及び図書館員に必要と考えるスキル,(3) 図書館情報学教育の現状・問題に関する認識,である。有効回答者は397人で,回収率は約45%であった。
 結果,担当者のプロフィールとしては男性が多く,全体の73%を占めた。年齢は50歳以上が63%を占め,また教員経験年数は10年未満が62%を占めたことから,図書館に長年勤務した後,教員になった者が多い可能性が示された。専任・非常勤としての勤務校は共に四年制私立大学が最も多く,約半数を占めた。図書館実務経験に関しては,大学図書館経験者が最も多く,全体の38%を占め,次いで実務経験の無い者が26%,公共図書館経験者が22%を占めた。専任として勤務している機関の課程種別としては,司書課程が最も多く,全体の48%を占め,次いで図書館情報学以外の専門課程が19%,図書館情報学の専門課程が12%を占めた。 教育目標としては,図書館の利用方法を含む基礎的な情報リテラシーの修得や,図書館業務に対する理解が重視されていた。また図書館員に必要なスキルとしては,レファレンスサービス,個人情報保護や著作権に対する理解,情報検索,コミュニケーション能力が上位に挙げられた。
 回答者のプロフィールとその他の調査項目に関していくつかのクロス集計を行ったが,先述の図書館実務経験の有無によって,必要と考える図書館員スキルが異なるかを調べたところ,実務経験者は非経験者にべて,書誌学,出版流通,英語を有意に重視していることが示され,先述の大学図書館員としての洋書目録経験の影響が考えられた。逆に非経験者は経験者に比べて,インターネット情報の組織化,資料保存・保護・製本を有意に重視しており,図書館の理念的機能を中心に考えている可能性が示された。また同様に,先述の司書課程所属者と図書館情報学専門課程所属者とで,必要と考えるスキルが異なるかを調べたところ,後者は地方公共団体の行財政や経営管理など,経営者としての視点を重視する傾向が見られた。
 また図書館情報学教育の現状・問題点を問う自由記述に関して,人(教員,学生,図書館専門職),教育・研究(カリキュラム,教育プログラム,教育目標,研究),その他(資格,就職,取り巻く環境)に分類し,内容分析を行った。その結果,担当者の図書館情報学教育に対する多様な考え方が浮き彫りになると同時に,カリキュラム,教育プログラムに関わる問題点,教育目標に関わる理念について,共通点が明らかになった。

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