【2005研究大会】公共図書館におけるレファレンスサービスの利用者像:半構造化インタビューによる基礎調査
◆所属 駿河台大学文化情報学部
◆発表題目
公共図書館におけるレファレンスサービスの利用者像:半構造化インタビューによる基礎調査
◆発表要旨
(1)研究目的
発表者のこれまでの研究から,我が国の市町村立図書館では,図書館サービスの先進地域であっても利用者の情報ニーズや利用に備えたレファレンスサービスがあまり行われていないことが明らかになっている。このことは,公共図書館が,利用者がどのような情報ニーズを抱き,図書館でどのようにして情報を入手しているかを十分に把握しきれていないことを示唆している。本研究では,我が国の公共図書館において,図書館側が用意しているサービスや環境に対して,利用者がそれらをどのように利用して自分の求める情報を入手しているのかを明らかにすることを目的とする。本調査では,それらを解明するために必要とされる調査の全体像,調査対象,適切な手法などを検討するための基礎的材料を得ることを目的としている。さらには仮説と調査結果の分析の観点を導くことを目指している。
(2)研究方法
上記のような目的を達成するために,2005年7月より公共図書館の利用者への半構造化インタビューを行っている。本研究のような,事前に質問項目を明確に設定しにくい,探索的,発見的な研究には,直接利用者から情報を聞き出すことができるこの手法が最適であると考えた。
インタビューは,1時間から2時間程度とし,図書館内の応接室において,調査者と調査対象者のみで行っている。インタビューの内容は,テープレコーダーとICレコーダーで記録し,音声をテキスト化し,インタビュー中の調査者による記録と合わせて,分析の材料としている。利用者が図書館で行う情報探索には何かパターンはあるのか,あるいは特徴的な行動はあるのか,について分析を行っている。インタビューは一名ずつ行っており,調査と同時進行で,終了したインタビューの文字化と分析を進め,得られた知見を次のインタビューに生かすという手順で行っている。
利用者への主な質問内容は①調査対象者に関する基礎的情報,②日常の図書館利用,③日常図書館でどのような情報探索を行うことが多いか,④情報入手までの具体的なプロセスと使用したツール,⑤サービスやレファレンスコレクションを認知しているかとし,会話の中からこれらを引き出せるように質問を行っている。
調査対象者は,利用者が図書館内で情報探索をする際に,できるだけ制約のないような環境が整った図書館であることを条件として考え,関東地方の奉仕対象人口約40万人の市立図書館の利用者とした。図書館でどのようにして情報探索を行っているかを把握する必要があるため,図書館を日常的によく利用している利用者であることを条件に,調査に協力してもらえる利用者の紹介を図書館に依頼した。現在3名へのインタビューを終えている。
(3)予想される成果
本調査により,公共図書館利用者の図書館でどのように情報探索を行っているかの一端を明らかにでき,今後の調査の仮説と分析の観点を導くことができる。さらに今後の調査の全体像,調査対象,適切な手法などを検討する材料を得ることができると考えられる。