三田図書館・情報学会:Mita Society for Library and Information Science

【2005研究大会】コミュニティ志向の時間・空間オントロジーの研究

◆氏名 三輪眞木子,神門典子
◆所属 メディア教育開発センター,国立情報学研究所
◆発表題目 
 コミュニティ志向の時間・空間オントロジーの研究
◆発表要旨
(1) 研究目的
 本研究の最終目標は,マルチメディア電子文書コレクションを組織化する上で,関心や価値観を共有しつつ相互作用を行う人間集団としてのコミュニティに最適な情報アクセス・インターフェイスを開発するための新たなアプローチを模索することである。
 個人の有するオントロジー(アイディア間の関係構造を描写する枠組み)は,世界に関する知識を伝達・共有する上で知識を有用な形で組織化するために個々人が創造し,新知識を獲得することで変化する。本研究では,個人の有するオントロジーをコミュニティ構成メンバーから抽出するとともに,コミュニティが共有するオントロジーとして統合するための手法を探求する。
 人間が視覚から知識を獲得する際に,全体を眺めながら入力として識別された対応するもののみを抽出するが,その際の見る行為における最小限の意味ある視覚形態は「イメージ(image)」と呼ばれる(Bertin, 1967, p.1)。イメージ概念は,物理的世界での見る行為だけでなく,人間が心の中で見る無形のものにも拡張できる。ブラウジングの機能的な構成要素に関する研究において,Kwasnik (1992, p. 194)は,分析単位として視点(view)を用いることを提案している。認知的世界に拡張された「視点」概念を,ある価値システムに立脚した固有のオントロジーを概念的に代表したものと捉えると,同一の視覚環境に直面したときに人によって異なるものを「見る」とみなすことができる。ある人が「視点」に見るものは,その人の現行の感覚にとらえられた対象物ないし対象群である。これを情報検索の文脈でとらえると,ある人が情報を検索しているとき,検索者の目にとらえられた情報の切れ端は,その人の内的オントロジーに基づく価値観や知識構造を代表する。この考え方を,関心や価値観を共有しつつ相互作用を行う人間集団としてのコミュニティに拡張すると,ある特定の利用者コミュニティの背後にあるオントロジーにフィットする情報検索インターフェイスを構築することで,そのコミュニティにおける情報検索プロセスを最適化することが可能になるだろう。
(2) 研究方法
 本研究は,時間・空間に関するオントロジーを事例として取り上げ,大学生を被験者として以下の3段階でデータを収集・分析する。
段階1:特定ドメイン(歴史・地理)において被験者(学生)が共有する関心事を抽出(アンケート法)
段階2:被験者(学生)が共有する関心事の探索プロセスにおける視点(view)を抽出(インターネット上で特定ドメインの関心事を探索するプロセスにける,①探索者の頭に浮かんだ思考や感情を発話思考法により抽出してビデオに記録,②画面の変遷と視線(gaze)の移動を記録,③ビデオ記録(①)と画面変遷・視線記録(②)の質的分析に基づき,被験者(学生)の視点(view)を抽出
段階3:段階2で得た個々の被験者の視点(view)を,被験者群が共有するオントロジーに統合
(3) 予想される成果
①個人の視点を抽出する手法
②個人の視点をコミュニティが共有するオントロジーに統合する手法
③コミュニティ志向の情報アクセス・インターフェイスへの提言

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