【2005研究大会】中規模大学図書館における情報リテラシー教育の現状
◆所属 (a)慶應義塾大学大学院, (b)帝塚山大学, (c)梅花女子大学,(d)同志社大学
◆発表題目
中規模大学図書館における情報リテラシー教育の現状
◆発表要旨
(1)研究目的
現在,大学図書館における情報リテラシー教育あるいは図書館利用教育に関しては,個々の大学における事例報告が主なものとなっている。しかし,情報リテラシー教育における今後の大学図書館の役割を検討する上で,大学図書館における情報リテラシー教育の現状を把握することが不可欠である。大学図書館における情報リテラシー教育に関する全国的な調査としては,全国の高専・大学図書館を対象にした2000年の橋による調査や大学の学習支援・教育支援機能という観点から全国の大学図書館を対象にした2001年の三浦等による調査等がある。ただし,これらの既往調査では,オリエンテーションと情報リテラシー教育,図書館利用教育といった用語の関係が明確でない,あるいはそもそも調査目的が情報リテラシー教育に焦点化したものではなかった。そこで,我々は,オリエンテーションから独立科目まで図書館が関わる情報リテラシー教育を段階的に捉え,2001年に大規模大学図書館(中央館)を対象に情報リテラシー教育の実施状況及びその内容を調査した。そして,その継続研究として位置づけられる本研究では,中規模大学図書館(中央館)を対象に,情報リテラシー教育の現状を明らかにすることを目的とする。
(2)研究方法
2005年刊行の文部科学省『大学図書館実態調査結果報告』におけるC類型,つまり2学部から4学部を有する大学(国立26校,公立28校,私立234校:2004年4月現在)の中央図書館を調査対象とした。この中には独立大学院や統廃合された大学が含まれていたため,実際の調査対象は275大学となった。調査方法は,郵送によるアンケート調査法を採用した。調査期間は,2005年の6月19日から7月19日を設定した。質問紙では,新入生へのオリエンテーション以外の全学を対象にした(a)一般的情報探索指導と(b)主題別情報探索指導の実施内容及びその形態,(c)独立科目型の情報リテラシー教育の実施内容及びその形態,さらに(d)図書館員が考える情報リテラシー教育の内容及びそれに対する関わり方を尋ねた。
(3)得られた(予想される)成果
米国を中心に,大学図書館における情報リテラシー教育に関する大規模な調査が行われている。翻って,我が国では,京都大学や三重大学等における先進的取り組みが報告されているが,個々の大学の事例にとどまるものが多い。時間的誤差はあるが,2001年に実施した大規模大学図書館調査と併せて検討することによって,我が国の大規模・中規模大学図書館における情報リテラシー教育の実態が明らかになるだろう。
また,2000年の橋の調査では,大規模大学,特に国立大学の図書館が積極的に科目としての情報リテラシー教育に参加していることが明らかになっている。他の既往調査との比較によって,情報リテラシー教育あるいは図書館利用教育の変化を把握することができる。
また,本調査では,情報リテラシーや情報リテラシー教育への関わり方に対する図書館員の意識にも着目した。これによって,図書館員が情報リテラシー教育やそれへの関わり方をどのように認識しているかが明らかになるだろう。