三田図書館・情報学会:Mita Society for Library and Information Science

【2005研究大会】わが国の大学図書館政策に関する研究:1990年代の動向を中心に

◆氏名 栗山正光,竹内比呂也,佐藤義則,逸村裕,加藤信哉,松村多美子,土屋俊
◆所属 常磐大学人間科学部現代社会学科,千葉大学,三重大学,名古屋大学,山形大学,椙山女学園大学,千葉大学
◆発表題目 
 わが国の大学図書館政策に関する研究:1990年代の動向を中心に
◆発表要旨
(1)研究目的
本研究の目的は,1990年代から現在にいたる日本の大学図書館政策の包括的な整理と検証を行うことである。国の大学図書館政策は,国レベルでの学術情報資源の構築,科学技術政策,および高等教育政策の3つの観点から重要な研究課題である。また,20世紀末から現在にいたる大学図書館政策は,電子化と大学改革の中における今後の大学図書館機能に関する考察の前提となるべきものであり,その包括的な整理が継続性のある業務の遂行のために実務的にも求められている。しかし,この分野の研究は,政策内容の紹介は数多く行われているが,上記の3つの観点からその全体像を明らかにし,政策の立案,形成,実施,成果を網羅する包括的な研究はほとんど行われておらず,本研究が課題とする時期については資料的な整理すら十分ではない。本研究はこの空白を補うとともに,分析の前提となる事実関係を解明することを意図している。
(2)研究方法
 大学図書館政策とその実施に関わるステークホルダーとして,文部省(特に,学術審議会(現在の文部科学省における科学技術・学術審議会))および国の予算配分の影響を直接的に受ける国立大学図書館(特に,その集合体としての国立大学図書館協議会(現在の国立 大学図書館協会))を想定し,それぞれにおける意思決定,政策実施の動向を時系列的に配置し,国立大学図書館に大きな影響を与えてきたと考えられる政策意思決定に関わるものとして,「学術情報システム」構築の基礎となった1980年の「今後における学術情報システムの在り方について」(以下「1980年答申」),学術審議会が初めて大学図書館を主要審議対象とした報告書である「大学図書館機能の強化・高度化の推進について」(以下「1993年報告」)および「大学図書館における電子図書館機能の充実・強化について」(以下「1996年建議」)を特定した。現在への影響という観点から特に1990年代を中心にして,1)「1993年報告」および「1996年建議」の内容の分析,2)各ステークホルダーにおけるさまざまな出来事の背景と当事者の認識を知るための関係者への聞き取り調査,3)文部(科学)省の大学図書館および学術情報システム関連予算についての資料の収集と分析,4)『大学図書館実態調査結果報告』に基づく大学図書館のサービス/資源の指標の変化についての分析を行い,これらの分析を相互に関連づけることにより,1990年代のわが国の大学図書館政策の全体像を際立った特徴の抽出という形で描いた。
(3)得られた(予想される)成果
 「1993年報告」は,大学図書館にかかる最も包括的な政策意思 決定を表現している。しかし,この文書で強化・推進すべきとされた大学図書館の各種機能は,その後均等な推進施策に帰結していない。このことは,予算配分状況や『大学図書館実態調査結果報告』によって示される成果指標から実証できる。この状況がもたらされた要因については,今後さらに外的要因を含め考察を深めることが必要であるが,1990年代の大学図書館政策の背景とその意義の観点から検討することが必要である。

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