【2005研究大会】「和古書総合目録における著作典拠について」
◆所属 天理大学人間学部
◆発表題目
「和古書総合目録における著作典拠について」
◆発表要旨
1)和古書総合目録を構築していく上で,記述対象資料毎にレコードが作成されることが共通の認識になっている。和古書は同一の著作であっても対象資料に記載されている書名は様々であり,さらに対象となる和古書は作成されてから100年以上経ったことによって元のかたちとは異なって,情報源が紛失・改変されていることもある。このように書名が極めて不安定な和古書においては著作典拠との関係を明示することは重要である。そのためには著作典拠ファイルが必要になる。『国書総目録』は著作名を標目にした和古書の総合目録として利用されており,同目録の著作データをオンライン化した,国文学研究資料館の「国書基本データベース(著作編)」はまずその対象と考えることができる。
2)ある文庫の目録作成をする機会を得,その際「国書基本データベース(著作編)」を著作典拠ファイルと想定してリンク付けを試みた。対象資料がどのレコードにあたるかを認定する際,「国書基本データベース(著作編)」に示されたデータだけでは極めて不充分であり,もとの『国書総目録』「古典籍総合目録データベース」を見比べながらの作業であった。さらに所蔵館のオンラインデータベースや公開されているイメージデータなどを利用することもあった。
3)「国書基本データベース(著作編)」を著作典拠ファイルとした場合には,有効に機能すると考えられる一方でいくつか問題がある。それは,同データベースの元になっている『国書総目録』の作成方法や当時の研究状況などに起因するものと考えられる。 問題点として,たとえば対象著作によって極めて多くの標目が上げられいる場合と1つの標目の中に様々なものを収めている場合がある。ある著作の頭注書について,頭注者ごとに1つの標目として列挙している場合と,著作のみを1つの標目として挙げ,頭注のあるなしあるいは頭注者の違いに関係なくその中に示している場合があった。また,写本の場合には刊本の伝蔵との関係で標目のたてかた異なっているようにも見受けられた。公開されているいくつかの情報源を見比べてもなお同定するに至らなかった場合もあった。
和古書総合目録においては,著作典拠への関係づけは不可欠であるが,和古書の著作典拠としてどのようなデータを想定するかを考える必要がある。