【2005研究大会】札幌市近郊中小都市における図書館来館者の利用行動-市制施行後に本館を新設した2市図書館を事例として-
◆所属 北海道武蔵女子短期大学(教養学科)
◆発表題目
札幌市近郊中小都市における図書館来館者の利用行動-市制施行後に本館を新設した2市図書館を事例として-
◆発表要旨
(1)研究目的
北海道における市町村合併は終盤を迎えつつある。石狩市も今年(平成17年10月1日)に厚田村,浜益村と合併する予定である。札幌市近郊の 北広島市と石狩市は平成8年9月1日に同時に市制を施行した人口6万人程度の都市である。市制施行後,本館を新設した両市の図書館は立地状況や施設形態(複合・単独),運営方針等で違いが見られる。
本研究は,両図書館において開館5年後の比較的利用の安定した時期に来館者調査を行うことにより大都市周辺中小都市の図書館利用者の基本的な利用構造を捉え,今後の行政区域を越えた図書館サービスの計画指針を見いだすことを目的としたものである。
(2)研究方法
本年6月,石狩市民図書館において平日と休日の2日間に亘り実施した来館者調査を基に,①来館経路と距離,②交通手段と所要時間,③在館時間と滞在人数,④利用館の選択,⑤利用目的と頻度などについて,平日と休日とに分けて北広島市図書館来館者調査(2002年11月に実施)で得られているデータと比較分析する。なお,両調査とも開館時から閉館時まで終日全来館者を対象に調査票を手渡しするアンケート方式で実施した。
(3)得られた(予想される)成果
北広島市はJR駅前立地型の複合施設で,石狩市は役所集積立地型の単独施設というように立地状況・施設形態が異なる2図書館であるが,どちらも自宅からの自家用車利用が中心であり,立地状況・施設形態による利用行動の差異はほとんど見られない。一方,両図書館とも行政区域を越えた近隣市町村からの利用者が約2割ほど占めており,自家用車の普及によるモビリティの高まりは,いずれの利用者属性においても非日常的な施設・設備の魅力に惹かれての本館志向を強めている。本館の利用形態としては,両図書館とも平日には利用頻度の高い日常的・習慣的利用者(主婦や無職高齢者が多く,休日には 図書の返却期限ごとに合わせて来館する利用者(特に,30~40歳代の勤務者男性)が多くなっている。
すなわち,本館の他に規模の小さい分館・分室レベルしか持たない図書館システムでは本館利用が中心であり,本館における平日利用は休日の混雑を避けて主婦や無職高齢者の利用が多い。本館利用者の中でも平日と休日とで利用者の棲み分けがなされている。