【2005研究大会】表紙画像の特徴をもとにした絵本の検索
◆所属 慶應義塾大学文学部 図書館・情報学専攻
◆発表題目
表紙画像の特徴をもとにした絵本の検索
◆発表要旨
(1) 研究目的
公共図書館の主要な業務のひとつに幼児・児童に対するサービスがある。絵本を幼児などに提供することは。ほぼ全ての公共図書館で行われている。また公共図書館には,かつて読んだ絵本を探して欲しいというレファレンス質問も寄せられる。
このような絵本を利用者が探そうとする場合,現在の検索システムではタイトル中のキーワードや登場人物などの語を指定して探すこととなる。しかし,幼児が図書中の語を表現することは難しく,またレファレンス質問を寄せる大人にとっても,過去に読んだ絵本のタイトルを正確には覚えていないために語からは検索できないことがある。
絵本は,文字によるタイトルと同時に,絵が大きな役割を果たすことから,こうした絵本を同定する際には,一般の小説などのように内容を表現する語からではなく,使用されている絵を元に探せることが望ましい。特に絵本の表紙に描かれている絵は,内容を端的に表現するものとして有効であろう。
このような絵本の表紙を元に検索を行おうする場合,どの程度の詳しさで表紙の内容を表現したらよいのかが問題となる。たとえば,単に「犬が描かれていた」というだけでは多数の絵本か該当してしまい求める図書にたどりつけない可能性があり,また,詳細に表現することを求めても,そこまで確かには記憶していないということがある。
そこで,本研究では現在刊行されている絵本の表紙絵のもつ特徴を分類し,公共図書館などにおいて絵本を検索するシステムを考える場合に,表紙の絵に関してどのような項目を指定すれば効果的なのかを検討する。
(2) 研究方法
amazon.com および 紀伊国屋Bookwebに収録されている絵本を対象として,その表紙にどのような構成要素が描かれているのかを人手で調べる。さらに,その構成要素を,内容(動物,乗り物,中小物など),方向(右向き,下向きなど),大きさ(表紙全体のどの程度の割合なのか),色などの項目ごとに分類する。さらに,多くの絵本に描かれているものについてはさらに細分類する。たとえば,動物をさらに犬,猫などに分けるのがこれにあたる。
さらに,画像のイメージからの検索を行うために,これらの構成要素を代表する絵を作成し,それを画面上にマウスを使って配置することで絵本が検索できるシステムを試作する。このシステムを実際に使用してもらうことで,どの程度の絵本が判別可能なのかについての評価を行い,項目の決定を行う。
(3)予想される成果
公共図書館などにおいて,絵本を直感的な画像から検索することができるシステムを構築するための基礎的なデータを得ることができる。また,人間が絵本に対して持つイメージを分析するための基礎的なデータとしても有効であると考えられる。