【2005研究大会】日本語書誌レコードにおけるFRBRモデルの有用性:著作パターンの分析
◆所属 慶應義塾大学 文学研究科 図書館・情報学専攻
◆発表題目
日本語書誌レコードにおけるFRBRモデルの有用性:著作パターンの分析
◆発表要旨
(1)研究目的
現在の図書館目録は,資料管理ツールとしての側面が強かったカード目録の時代からの慣行を引きずっており,インターネットの普及による情報環境の変化に適応しているとは言いがたい。つまり図書館目録には,目録の機能を資料管理志向から利用者志向へと変えるような高度化が求められているのである。1997年にIFLAの研究グループが発表した「書誌レコードの機能用件(Functional Requirements for Bibliographic Records: FRBR)」は,こうした変化に対応すべく,目録の諸機能を利用者の観点から再検討した書誌レコードのための概念モデルである。中でも実体の第一グループ(「著作」‐「表現形」‐「体現形」‐「個別資料」)は,現実の図書館目録に適応可能な形で,目録が記述対象とする知的・芸術活動の成果を定義しており,既に米国研究図書館グループ(RLG)の総合目録であるRedLightGreenなどに実装されている。しかし我が国ではまだ紹介段階にあり,実際の日本語書誌レコードを対象にFRBRモデルの有用性や可能性を探る研究は行われていない。
そこで本研究では,わが国の図書館目録へのFRBR実装の第一歩として,日本語書誌レコードにFRBRの第一グループ実体を適用し,日本語書誌レコードがもつ著作のパターンを明らかにする。さらには,我が国の書誌レコードにおけるFRBRモデルの有用性を確認する
(2)研究方法
既存のOPACから抽出した日本語書誌レコードに対して,FRBRの第一グループの実体のうち「個別資料」を除く「著作」‐「表現形」‐「体現形」を適用する。なお本研究では,日本語書誌レコードの特徴がよく現れると考えられる和図書の書誌レコードのみを対象とする。なお,書誌レコードを「体現形」レベルと仮定する。
FRBR適用の具体的な手法は次のとおりである。慶應義塾大学のOPACであるKOSMOSⅡから,NDCの類ごとに100件ずつ,合計1000件の書誌レコードを標本として無作為抽出する。次に抽出した書誌レコードに対して,そのレコードと同じ「著作」だが「表現形」や「体現形」が異なる書誌レコードを標本外から集め,「著作」単位での書誌レコードの集合を計1,000個作る。更に,個々の「著作」単位の集合を「表現形」単位のグループに分割する。
こうした作業の結果得られた書誌レコードの集合を「著作」単位や「表現形」単位で分析し,複数の表現形・体現形をもつ複雑な著作であるか,逆に一つの表現形・体現形しか持たない単純な著作であるかどうかなど,和図書の著作がもつパターンを明らかにする。更に,NDCの類ごとに著作パターンを分析し,分野によって著作パターンに相違が見られるかどうかを検証する。最終的には,そこから日本語書誌レコードにおけるFRBRモデルの有用性を確認する。
(3)予想される成果
以下の点を明らかにする。
・日本語書誌レコード中のFRBRモデルが有効とされる大規模著作の割合
・和図書の著作がもつ表現形および体現形の平均数
・和図書の著作がもつ著作パターン
・分野による著作パターンの相違