【2005研究大会】サーチエンジンにおける探索結果を評価する行動の分析
◆所属 1)名古屋柳城短期大学図書館,2)名古屋大学附属図書館研究開発室
◆発表題目
サーチエンジンにおける探索結果を評価する行動の分析
◆発表要旨
(1)研究目的
サーチエンジンの普及に伴い,Webは,今や学生を中心とする情報利用者の第一の情報源となっている。大学図書館における情報探索指導を効果的に行うためには,利用者がどのようにWebを利用しているかについて,客観的な理解と分析的な知識が必要とされる。そこで,本研究では,利用者の情報探索行動調査を継続的に行い,その対応を検討している。2003年と2004年に行った,短期大学生及び大学生に対するプロトコル分析法による調査では,Web情報源の質的評価が欠落する傾向を示した(三田図書館・情報学会 2004年度 研究大会にて発表)。
今年度は,これらの研究成果にもとづいて,「情報を評価する」行動に重点をおいた実験調査を行った。そこでは,4つの検索課題(①易課題,②難課題,③科学分野の課題,④健康分野の課題)を用いて,サーチエンジンにおける探索結果を評価する行動の特徴と問題点を検証した。
(2)研究方法
2005年7月に,N大学において全学教養科目「情報リテラシー(文系)/(理系)」を受講した複数学部の1年生13名を対象に,サーチエンジンGoogleを使用した検索実験を行い,被験者らが回答を得るまでの検索プロセスを筆記した回答文書と観察法をもとに,記述分析を行った。そして検索過程における被験者のマウス操作(例:テキストなぞり読み,ポインティング,クリック,スクロール)のデータをもとにトランスクリプションを作成し,被験者の暗黙的な注視点からコンテンツのどの部分を確認し,評価を行っているかを検証した。これにより,被験者一人一人の検索過程中のコンテンツ評価行動を捉えようとした。
(3)得られた(予想される)成果
回答の情報源とされたWebページの96%は,Googleの検索結果1頁目に表示されたものであり,課題の難易度にかかわらず,サーチエンジン側の結果表示ランキングに対する被験者の依存度は著しい,という結果が確認された。 また,被験者の多くは,実験前に受講した「情報リテラシー」で学習したサーチエンジンの機能(例:翻訳,キャッシュ,イメージ,フレーズ,ページ内検索)を戦略的に使用しており,事前の検索指導により,一定の検索技術を習得していることがわかった。しかし,コンテンツの評価では,事実と広告主張の判別,複数の情報源による確認,原典となるページの確認に対する意識は薄い傾向が見られ,情報源の質的評価における課題が明らかとなった。
現在,マウス操作によるデータをもとに,被験者の暗黙的な情報関心の検証を行っており,上記の結果と総合して,報告する予定である。
本研究で得られた知見は,利用者のコンテンツ評価行動の特徴と問題点を提示し,情報探索指導プログラムを作成するための基礎資料となる。