【2005研究大会】臨床看護研究と情報収集行動の実際
◆所属 上武大学看護学部 筑波大学大学院図書館情報メディア学科博士課程
◆発表題目
臨床看護研究と情報収集行動の実際
◆発表要旨
1)研究目的
現在臨床看護研究は,医療機関により入職後2-3年で研究に携わることが義務化している施設もあるほど,看護者にとって日常的な活動として浸透している。一方「新規性に欠ける研究が原著論文とされている」「先行研究の文献情報が把握できていない」などの指摘もされている。看護者の日常的情報収集行動と,臨床看護研究における情報収集行動を明らかにし,臨床看護研究に取り組む実践看護者のニーズに文献情報提供が合致していないのであればその要因を明らかにしたい。
2)研究方法
臨床看護研究と文献活用に関する質問紙調査を,大学病院看護師589名を対象に行い回収率は71%(418)であった。日常的情報収集行動に関し,利用する情報源,雑誌購読状況,PC活用を,研究時情報収集行動は,日本看護学会情報,情報源,文献データベース認知度,文献検索の目的について調査した。更に臨床看護研究の指導的立場にある看護管理者の情報収集行動を看護管理領域の論文155件の引用文献913件の分析を行った。さらに各著者の引用文献の情報収集行動についても質問紙調査を行いたい。
3)得られた(予想される)結果
研究時文献探索の目的は,先行研究や類似の研究情報確認が72.2%,理論的説明58.2%などであった(複数回答)。最も頻度の高い情報収集方法は図書や論文中の参考文献と61%が回答,データベース検索は16%でしかない。(結果の一部は看護情報研究会で発表)。日常的な情報収集行動として雑誌利用上位5誌を分析したが,利用雑誌名の無回答者は144(34.8%)で,65%以上は常に雑誌を利用していると認識し,延557件回答され,回答者あたり平均2件であった。最も頻度の高い雑誌はExpert Nurseで頻度1位64件,2~5位で25件計89件だった。利用上位誌中,自費購読誌は延111件で,最多はExpert Nurse23件であった。自費購読誌や利用頻度1位でも誌名誤記が多かった。利用頻度の高い雑誌が,研究における引用文献の頻度が高い雑誌と必ずしも合致していない。解説記事やトピックスで構成された実践業務中心の商業誌で,求人情報が多い傾向もある。また専門領域に特化した雑誌の利用が上位に多かった。
引用文献調査では雑誌は3年前がピークで,図書は2年前がピークであった。データベース検索利用の影響かは不明である。看護管理者の引用頻度の高い雑誌は,日本看護学会論文集や日本看護研究学会雑誌など学術雑誌の比率がより高く,実践看護者の利用頻度の高い雑誌とは異なる。これが職位による違いか,日常的情報収集行動と,研究時情報収集行動の違いかは追加調査を通して明らかにしていきたい。