三田図書館・情報学会:Mita Society for Library and Information Science

2026年度研究大会 プログラム

日時:2026年11月14日(土)
場所:慶應義塾大学三田キャンパス第1校舎121教室(オンライン併用)
申し込み:Peatix(必ず事前の参加申込をお願います)

セッションI

  1. 110:00
    学術資料の研究活用における標準化の意義:TEIガイドラインの応用可能性をめぐって
    永崎研宣(慶應義塾大学/一般財団法人人文情報学研究所)
    発表要旨学術資料は、文献資料のみならず様々な形態のものがあり、それぞれの性質に応じた機関に所蔵されている。発表者は、なかでも人文学の電子化資料共有のために開発されたデファクト標準であるTEIガイドラインの活用に2000年代から取り組んできた。これは当初は文献資料を主な対象としていたが、2010年代にIIIFが登場したことにより、TEIガイドラインもまたこれに対応することで適用対象資料の範囲が拡大しつつある。TEIガイドラインとしては、それ以前から多様なメディアに対応する指向性を有しており、Feature StructuresによるCIDOC-CRMのシリアライズをはじめとして様々な方向で用いられていたものの、IIIFはAPIとして対応アプリケーションも含めて普及が進んだことから、これによって適用範囲の拡張は大きく促進された。本発表では、複数の事例を踏まえてこのことの意義と課題について検討する。
  2. 210:20
    不登校児童生徒支援のための公共図書館と教育支援センター・学びの多様化学校との連携
    *乗松恵子(慶應義塾大学大学院)
    発表要旨学校を長期に欠席する児童生徒(いわゆる不登校児童生徒)を支援する教育支援センターや学びの多様化学校の整備が全国で進められている。そして,これらの施設を支援する公共図書館もみられる。先行研究では,公共図書館の居場所としての機能や,児童館・児童福祉施設との連携が論じられている一方,これらの支援施設との連携を分析した研究は見当たらない。本研究では,190の教育支援センター(66件回収,34.7%)と57の学びの多様化学校(26件回収,45.6%)を対象にアンケート調査を実施し,公共図書館との連携内容や図書館への要望等を明らかにし,今後の支援の在り方を検討した。その結果,読書活動や団体貸出等の連携が実施されていること,地域の学習リソースの情報や司書によるプログラムの提供が求められていることが明らかとなった。一方で,物理的・制度的な連携上の制約が確認されたことから,これらを踏まえたより積極的なアウトリーチの必要性も示唆される。
  3. 310:40
    シラバスに対するテキスト分析に基づく大学でのデータサイエンス教育の特徴
    飯田恭平(法政大学)
    発表要旨デジタル時代のリテラシー向上のため、文部科学省により数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(MDASH)が始められた。数多くの大学がその認定を受けつつあるなかで、その教育の実態を詳細に把握することが重要となっている。本研究では、MDASHでのリテラシーレベル認定校のうち、150大学331科目の2025年度シラバスを対象とし、テキスト分析を通じて、その特徴の把握を試みた。その結果、教育内容には大学間で共通性がみられる一方、特に重点が置かれる内容については大学ごとの違いが観察された。また、認定年度が遅い大学ほど共通的な教育内容になっている傾向がある。これらの結果に基づいて、制度の普及と教育内容の共通性・独自性との関連を考察する。また、2026年度の再認定にも着目し、制度の成熟とともに教育内容がどのように変化しているかを示す。
  4. 411:00
    高等学校の学校図書館における進路指導・キャリア教育関連実践:実践報告の分析を通じて
    *植田亜里沙(慶應義塾大学大学院)
    発表要旨1957年の学校教育への進路指導導入,およびそれを再定義した1999年のキャリア教育導入以後,学校図書館においても関連実践がなされてきた。しかし,実践を網羅的に集めて分析する研究はなく,蓄積された実践の周知も不十分である。本研究では,全国学校図書館協議会の月刊誌『学校図書館』1957~2025年刊行分に掲載された高等学校の取り組みを報告する記事の全文を確認した上で,進路指導・キャリア教育に関する記述のある228件を収集し,学校教育や教育行政の動向を踏まえ整理・分類した。キャリア教育の組織的推進が求められる現行学習指導要領下で,学校図書館員の役割の明確化や学校図書館活用推進の示唆を得ることを目的に,活用される資料や機能,校内外との協働,期待される教育効果に着目し分析を行った。分析より,進路指導導入期から人生を考える読書会,社会人との交流など,各時期の社会・教育課題に応じた多様な実践が展開されていたことがわかっている。

12:50 学会賞授賞式

査読セッション

  1. 513:00
    障害者の情報探索行動に関する障害種間の共通点と相違点:文献レビューに基づいて
    *関根博子(慶應義塾大学大学院文学研究科)
    発表要旨本研究は,2020年以降に公表された障害者の情報探索行動に関する67件の文献を内容分析し,障害種間の共通点と相違点を整理した。その結果,障害種を超えた共通点として,生活上の情報ニーズ,複数の情報源と媒介的支援の併用,公的・専門的情報源との乖離,情報探索上の困難が示された。また,当事者由来情報による,障害とともに生活するための実践知の共有も確認された。一方,困難の中心となる側面とその組合せには,障害種による違いがみられた
  2. 613:20
    学校内専門職との比較からみた学校図書館専門職養成制度の構造的特徴と課題
    吉澤小百合(実践女子大学)
    発表要旨本研究は,学校内専門職と学校図書館専門職の専門職化を構造的に比較し,学校図書館専門職の特徴と課題を明らかにすることを目的とした。橋本鉱市のモデルを分析枠組みとし,養護教諭,栄養教諭,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーを対象にドキュメント分析を行った。その結果,学校内専門職には4点の特徴が見られたが,学校図書館専門職の場合は専門性の地盤や専門職団体の構造が他職種と異なり,養成制度や専門性の確立に固有の課題を抱えていることが示唆された。
  3. 713:40
    スクール・ライブラリアンを中心とした協働をめぐる海外文献の分析:2000 年以降を対象に
    *東山由依(慶應義塾大学大学院)
    発表要旨日本における学校図書館員(司書教諭と学校司書)をめぐる協働の発展に向けた示唆を得ることを目的に,スクール・ライブラリアン(SL)を中心とした協働をめぐる2000年以降の海外文献95 件を対象に分析を行ったところ,協働の理論化,実践報告,SLの役割,制度・養成等のカテゴリに分類できた。協働を支える制度・条件・専門職養成の文献が恒常的に最多となり,協働は校長をはじめとした学校組織レベルの支援と結びつくことで持続可能となることがわかった。
  4. 814:00
    情報生態系から見た情報リテラシー教育の課題
    瀬戸口誠(梅花女子大学)
    発表要旨生成AIやSNSの普及等に伴う情報生態系の変化を踏まえ, 本研究は従来の情報リテラシー教育の限界と情報利用観の転換を論じる。能動的・合理的な情報探索モデルの限界に対し, 情報過多等に対処する「非探索的・回避的情報利用観」の導入を提唱する。さらに, 情報源の不可視化や推薦アルゴリズムによる受動的な情報消費に対応するため, 学習者の「インフォメーション・ホライゾン」に即した教育設計と批判的視点の必要性を提示する。

セッションII

  1. 914:40
    日本近代文学分野の学術論文における原稿および草稿の利用
    *塩井祥子(慶應義塾大学文学研究科博士課程)
    発表要旨本研究は、日本近代文学分野における原稿、草稿、未定稿と呼ばれる作家の自筆資料を利用した研究論文を調査し、利用の全体像を把握することを目的とする。当該自筆資料は当該分野の様々な研究法や視点の論文に利用されており、利用の程度も一様ではない。当該自筆資料は、図書館を含む様々な文化機関に分散して収蔵されており、近年インターネットでの画像公開により、アクセス性が大幅に改善されている。しかし、高度な利用のためには更なるデータの整備が必要な状況であり、そのためには特定の研究法や視点に基づかない利用の調査を要する。具体的には、当該分野の査読誌である『日本近代文学』の2025年までに発行された全号を網羅的に調査し、当該自筆資料の利用が確認される論文を調査対象とする。調査対象の冒頭章と最終章を除く中間章において当該自筆資料の特徴や内容が言及されている箇所に着目する。それをコーディングした上で、言及されている特徴や内容の種類と頻度を調査した。
  2. 1015:00
    ヘルシンキ都市圏の公共図書館における市民参加と図書館間連携
    吉井潤(都留文科大学非常勤講師)
    発表要旨本研究は,資料提供に加えて学習・創作・交流等の機能を担うヘルシンキ都市圏の公共図書館に着目し,市民参加,図書館間連携,館内空間・サービスの関係を明らかにすることを目的とした。2026年8月にヘルシンキ中央図書館オーディ,エスポー市のイソ・オメナ図書館とリップライヴァ図書館を訪問し,館内観察と図書館職員による館内案内の記録を比較分析した。その結果,3館はいずれもHelmetによる自治体を越えた資料利用が可能である一方,資料の所有,購入予算,フローティング・コレクションの運用には自治体単位が残されていた。また,市民参加は計画段階だけでなく開館後にも形を変えて継続していた。さらに,3館は共通する図書館間連携の基盤を持ちながら,オーディでは創作・交流,イソ・オメナでは複合公共サービス,リップライヴァでは子ども・家族を重視するなど,各館の地域的役割に応じて異なる空間・サービスを形成していた。
  3. 1115:20
    集合関係に着目したテレビ番組メタデータモデルの実データへの適用
    *関根禎嘉(慶應義塾大学大学院文学研究科)
    発表要旨本研究は、テレビ番組の内容とその放送実態を記述するメタデータモデルをRDF(Resource Description Framework)で構築し、実際の番組情報への適用を通じて、その記述可能性を検証する。テレビ番組はシリーズやシーズン、週単位など、番組ごとに異なる集合関係が存在し、同一の内容が異なる放送局や日時で放送される。そこで既存の記述モデルを踏まえ、番組内容そのものを扱うContentドメインと、いつ、どこで放送されたかという出来事を扱うEventドメインから構成するメタデータモデルを提案する。このContentドメインには、複数のエピソード等を任意の単位でまとめるComponentクラスを設け、多様な集合関係を表現可能とする。今回、日本国内の実際の番組情報を対象として提案モデルによる記述を行って適用結果を示すとともに、SPARQLによる検索を試行する。
  4. 1215:40
    日本の公共図書館における馬・競馬関係資料の所蔵調査
    西川和(文教大学)
    大橋洸太郎(文教大学)
    伊藤佑起(文教大学大学院)
    発表要旨2020年以降に出版された馬・競馬関係資料のリストを作成し、カーリルAPIを用いて国内の公共図書館における所蔵を調査した。その結果、多くの資料を所蔵しているのは中央競馬会の育成施設の所在地や馬産地の図書館、所蔵数の多い大規模図書館、馬に関する歴史を持った地域の図書館であることが分かった。一方で競馬場の所在地で所蔵が多いのは府中市のみであった。また、多くの図書館で所蔵されている資料は競馬ではなく馬に関わる社会や文化を扱っていた。しかし、馬・競馬関係資料の所蔵が多い図書館ではそれらの資料も持ちながら、競走馬や競馬に関わる資料も併せて所蔵していた。中には、公共図書館全体における所蔵数は少ないけれども、競馬関係資料の所蔵が多い図書館のほとんどが所蔵している資料もある。その一方で馬券やPOG関係の資料などは競馬関係資料を多く所蔵している図書館でもほとんど所蔵していなかった。

セッションIII

  1. 1316:20
    国内学術雑誌に掲載された論文作法の分野および時代による特徴
    安形輝(亜細亜大学)
    発表要旨学術情報流通における論文の重要性は指摘するまでもない。分野ごと、時代ごとに論文の扱い方には違いがあると考えられる。ここではそれらの違いを確認するために国内学術雑誌に掲載された論文作法・執筆の記事を収集し分析を行った。国立国会図書館で提供されている大規模書誌データ中の雑誌記事データ約1.47億件を対象に、論文作法に関連するキーワードにより記事を抽出し、複数情報源(J-STAGE、CiNii等)間の名寄せ統合を実施した。さらに決定AIモデルによりタイトルや抄録などのテキスト判定を適用し、3,000件以上の論文作法記事セットを作成した。セットについて分野ごとの傾向、DOI普及状況、頻出トピックの経年変化などの観点で集計を行った。結果としては、論文執筆に関する分野固有の文化や特徴、また、近年における研究倫理といった規範や生成AI活用への言及が増加しつつあることを明らかにした。
  2. 1416:40
    北米の研究大学図書館における学士課程学生支援の現状:「学士課程学生による研究」への支援に関する2026年インタビュー調査を中心に
    新見槙子(東京大学情報基盤課学術情報チーム)
    発表要旨北米の研究大学図書館には,第二次世界大戦後の時期より学部学生用図書館の伝統があり,1970年代以降にそのムーブメントが収束した後も,現在まで研究大学という環境下で学士課程学生への支援を行ってきた。本研究では,北米の研究大学図書館における学士課程学生支援の現状を明らかにするために,研究大学の特性が生かせる教育手法とも言われている「学士課程学生による研究(undergraduate research)」への支援を中心に,インタビュー調査(オンライン・対面・メール)を2026年に実施した。調査対象は,発表者による2025年質問紙調査の回答館のうち協力を得られた10館である。インタビュー結果より,「学士課程学生による研究」への支援は大学や図書館の使命に沿って実施されている,専門部署や担当職を設けるなど組織的な支援が行われている館や,以前と比較してより多面的な支援に変化した館もある,図書館員が学生の経験や成功を促す役割を担っている等が分かった。
  3. 1517:00
    沖縄現代史をめぐる図書館の地域アーカイブ/ドキュメントの考察
    根本彰(東京大学)
    発表要旨発表者は著書『アーカイブの思想』(2021)および『知の図書館情報学』(2024)において,図書館情報学におけるアーカイブとドキュメントの関係を論じ,続いて現在はナショナル/リージョナルの対立項をアーカイブ/ドキュメントの議論に当てはめることの意義とその議論において図書館がどのように位置づけられるかに取り組んでいる。本研究ではナショナル/リージョナルの両面の性格をもつ沖縄において,アーカイブ/ドキュメントがどのように扱われてきたのかについて述べ,とくに沖縄戦で一旦失われかけた沖縄史再構築のためのアーカイブ活動を取り上げる。沖縄県立図書館,沖縄県公文書館,沖縄県史編さん事業,浦添市立図書館,各地域で取り組まれてきた字誌編さん事業を中心にして,戦後沖縄の地域アーカイブ/ドキュメントにかかわる諸活動を記述するケーススタディ的な検討を行った。(JSPS 科研「 マージナルな歴史的記憶を負荷された地域アーカイブ研究」22K12717)
  4. 1617:20
    Catholiconにおける意図されていない印刷の痕跡の書誌学的分析
    安形麻理(慶應義塾大学文学部)
    発表要旨1460年にマインツで印刷されたという刊記を持つ最初期の活版印刷本の一つであるCatholiconには,未解明の点が多い。3種類の刷(ABC)が現存するが,テクストにはほぼ違いがなく,行の左右へのずれや入れ替わりと修正などが2行単位で見られるという特徴がある。印刷技法と時期に関しては,(1)ヨハン・グーテンベルクが2行ずつのステレオタイプ状の薄い板(スラッグ)を作って1460年に刷Aを印刷し,彼の死後の1469年と1472年に同スラッグから刷BとCが印刷されたとする説,(2)彼の死後,1469年より後のほぼ同時期に通常の活字による組版を用いて3か所で印刷されたという説,の二つがある。本発表では,デジタル画像および6点の現存本の調査と部分的なデジタル校合に基づき,版面の端が食い込んだ圧痕や活字の肩に付着したインク痕などの,本来は意図されていない印刷の痕跡に着目することが,この疑問の解明に有効であることを示す。

閉会

氏名の前に「*」が付されている発表者は,ベスト・プレゼンテーション賞の授与対象者(学生・大学院生の身分を明示した登壇発表者)です。受賞者は,プログラム委員の合議により選出されます。

研究発表について

  • 発表者への連絡事項を必ずご確認ください。
  • 査読セッション発表申込: 査読セッションへの投稿は先着20件を上限とします
  • 通常セッション発表申込
  • スケジュール
    7月29日(水)査読セッション申込締切
    9月16日(水)査読セッション結果通知
    9月3023日(水)通常セッション申込締切
    10月7日9月30日(水)査読セッションカメラレディ原稿提出締切
    11月4日(水)通常セッション原稿提出締切

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